2010年10月19日火曜日

奥日光の紅葉 前編  Caput Medusae 

まるでメドゥーサの頭のような不思議な造形です.倒木の根ですが,なぜか厚い板を彫ったかのように平面に広がっています.



メドゥーサというのは髪が無数の蛇で有名なゴルゴン3姉妹の一人ですね.美しい髪を自慢しすぎたがために蛇に変えられてしまったので,遺伝ではないそうです.(他の2人はもともと蛇だったらしい)

ゴルゴンは意外に身近にありまして,鏡を見たら映っていたという人もいるかもしれません...ちなみに石化の力は直接見たときだけですので,鏡をみて(自分の顔にびっくりして)硬直してしまっても石化ではありませんので,ご安心あれ!?





山から紅葉が下りて来るのを待っていられずに,ちょっと遠征して観光してきちゃいました.


懐かしの湯川はフライフィッシングの聖地です.もっとも今は禁漁期なので,釣りはできません.紅葉情報によると先週は標高2000mぐらいが良かったそうなので,戦場ヶ原はまだ早いかな?なんて思いましたが,意外と見頃でした.



紅葉の楽しみも色々あると思いますが,この辺りは笹の緑と木上の黄葉が独特のコントラストを作り見事です.


一面に赤くなっている葉っぱばかりを追いかけている年頃ではないので,こんな秋にもどきどきしますね.


3時間ぐらい歩いても全然飽きませんし,道も素晴らしく整備されています.






熊よけの鈴を忘れたので,

"ちいさな山でも熊は出る ゆーだんしてたら腹が出る

これを大声で歌いながら歩きました.周りに人がいなくて良かったです.もし歌声を聞かれた方がいらしたら,とどたちと同じ場所にいたんですね.今年は熊の出没が多いそうなのでしゃれになりません.餌を求めて徘徊している熊に死んだふりをしてはいけません



戦場ヶ原というのは人ではなくて,神様の戦いがあった場所ですね.赤沼はむかで神の血でできたそうです.


川には小さなトラウトがたくさんいます.


なんて気持ちのいい散策路なんでしょう.竜頭の滝? チャオズなら知ってるけど...





おまけ

話はメドゥーサに戻りますが,ギリシア神話時代からなかなかに重要なお方のようですので,今でも随所に拝見することができます.

首を切り落とされて頭だけになってもメドゥーサの魔力は持続し,相手に向ければ破魔の力があるようです.現代のイージス艦は,イージスの盾から由来していますが,この盾はペルセウスによって切り落とされたメドゥーサの頭部が相手を睨むようにはめ込まれたアテナの盾のことです.

メドゥーサの頭はGorgoneionとして守りの象徴とされ,フランス革命後のジャコバン党のエンブレムになったり,シシリーの旗として使われていました.(Gorgoneionは彼女や奥様の写真を魔除けにしているのと一緒ですね)

(危うくモヒカン刈りにされそうになった)フローレンスには師匠のカバン持ちとしてついて行ったのですが,ここにはいろいろなゴルゴンがいます.なぜフローレンスなのかというと,ルネサンスの発祥がここだからです.神と人が一緒に住んでいたギリシア神話はギリシア時代に語り継がれ,キリスト教が広がる前のローマ時代のモチーフとして好んで描かれ,そして1000年後のルネサンスで芸術として復活します.
ベンヴェヌート・チェッリーニの彫刻やルーベンスダビンチの絵画の題材に何度もなり,フローレンスの広場や美術館内に飾られています.

さらにローマ時代にまで遡ると,有名なアレキサンダー王のモザイク画の鎧に描かれているのはメドゥーサの頭です.イージスの盾は,いわゆる盾ではなくて胸当てかもしれないとされていますので,大王の鎧もイージスの盾だったのでしょう.このモザイク画はポンペイで発掘されたフォーンの家に飾られていました.


残念ながら今回は天候に恵まれなかったので,小野川湖の使い回しです...

そして,ギリシア神話では,メドゥーサと戦ったペルセウス(Περσεύς)は星座になっています.ペルセウス座には有名なアルゴル(Αλγκόλ)という変光星があります.定期的に明るさが変わる理由は,明るさの違う二つの星(実際は三つ)が交互に観察されるからだそうです.この奇怪な星の位置こそが,ペルセウスが手にしているメドゥーサの頭部(Caput Medusae)にあたります.

0 件のコメント: